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現金より名誉が組織を強くする——オージャスト代表が語る表彰設計の本質

2026-09-23

現金より名誉が組織を強くする——オージャスト代表が語る表彰設計の本質

2026-09-23

「お金は慣れます。でも、名誉は慣れないんです」——株式会社オージャスト代表の金功勇は、取材の冒頭からそう言い切りました。社内イベントの企画・制作・運営を長年支援してきた代表が、近年とくに力を入れて語るのが「名誉の報酬」という概念です。現金インセンティブが当たり前になった時代に、なぜいま経験や名誉によるモチベーション設計が組織を強くするのか。20年にわたる現場経験と、組織心理学・経験経済論の知見を重ね合わせながら、代表にお話を聞きました。

 

現金報酬が抱える「インフレーションの罠」

多くの企業が、社員のモチベーションを上げる手段として現金ボーナスやインセンティブ報酬を採用しています。一定の効果があることは否定できませんが、代表はこの仕組みに根本的な限界があると指摘します。

「現金報酬の問題は、人が慣れてしまうことです。最初は10万円のインセンティブに喜んでいた社員も、それが当たり前になると感動しなくなる。すると次は20万円にしなければならない。金額のインフレーションが起きてしまいます」

この「慣れ」は、心理学的にも広く認められた現象です。報酬刺激に対して感覚が鈍化していくと、組織は常により大きな報酬を用意し続けなければならなくなります。中小・中堅企業にとって、このサイクルは財務的にも組織文化的にも持続しにくいものです。

代表が注目するのは、Googleが行った報酬研究の知見です。「現金を報酬として渡したグループと、旅行券などの体験型の報酬を渡したグループを比較した研究があります。結果は、体験型報酬を受け取ったグループの方が満足度が高く、その効果が長期間持続したというものでした。これは、経験経済の時代における報酬設計に大きな示唆を与えていると思います」

「経験経済」とは、モノや金銭よりも体験・経験に価値を見出す消費・行動原理のことです。この概念は企業のマーケティングにとどまらず、組織内のモチベーション設計にも深く関わっています。代表は、社内イベントの現場でまさにこの原理が機能していることを繰り返し目撃してきたと言います。

 

名誉報酬は「なぜ」持続するのか

では、現金に代わる「名誉の報酬」とは具体的に何を指すのでしょうか。代表はその本質を、評判情報の流通という言葉で説明します。

「名誉の最大のメリットは、慣れないことです。現金は翌月の給料日が来れば忘れられますが、名誉はそうではありません。社内で『あの人、あんな記録を出したんだって』と語り継がれる。その会話が起きること自体が、組織のエネルギーになっています」

代表がとくに印象的な事例として挙げるのが、ある大手不動産会社のケースです。「その会社は、業界水準と比べて報酬が高いとは言えない環境でした。でも社員が本気で頑張っていた。理由を聞くと、表彰タイトルへの強いこだわりがあったんです。社内で名誉ある称号を獲得することが、報酬の代わりとして十分に機能していました。名誉の報酬がリソースとして働いていたんです」

このような組織では、名誉が「なぜ頑張るのか」という動機の核心を担っています。そして代表が重要だと強調するのは、名誉の報酬は社内文化さえしっかり醸成されていれば、コストをかけずに持続できるという点です。「正直、現金のような財務的なコストは発生しません。必要なのは、丁寧な設計と継続する意志です」

 

表彰の「ギネス化」——多角的な記録が生む複数のヒーロー

名誉の報酬を機能させるためには、表彰の設計そのものを根本から見直す必要があると代表は言います。多くの企業が採用している「トップセールスを1人表彰する」という方式は、組織全体への波及効果という点で非常にもったいないと指摘します。

「表彰の目的は、1人を称えることではなく、組織全体のモメンタムを高めることです。そう考えると、表彰の設計も変わってきます。私が提案しているのは、表彰の『ギネス化』という考え方です」

代表が言う「ギネス化」とは、野球の記録のように、業績を多角的な切り口で記録・表彰する仕組みのことです。「単純に年間の売上トップを1人表彰するだけでは弱いんです。たとえば、月間の最大契約件数、年間の最大契約金額、クォーターごとの契約件数、連続受注の記録、一回あたりの最大契約金額、新人の最短契約記録……こうした多角的な記録を設計することで、表彰される人の数が大幅に増えます」

そしてこれらの記録を、会社の歴代アーカイブとして蓄積していくことが肝心だと言います。「現役社員が目指せる目標が増えるんです。たとえトップ営業マンであっても、社内に今の自分を上回るライバルがいなくなったら、次は過去の部長が新人時代に残した記録を目指せる。そういうダイナミズムが生まれます」

ここで代表が繰り返し強調するのは、「記録そのものが目的ではない」という点です。「目的は評判情報の流通です。『あの人がこんな記録を塗り替えたらしいよ』という会話が社内のあちこちで生まれる。そのことで、組織の中に複数のヒーローが誕生し、全体のモメンタムが高まっていくんです」

 

参加者の3分の1が「当事者」になる設計

表彰の設計において、もう一つ重要な視点があります。代表が「3分の1ルール」と呼ぶ考え方です。表彰される人数を設計する際、参加者全体のおよそ3分の1が何らかの形で表彰対象になるよう工夫することが、組織全体の一体感を高めると言います。

「すべての人を表彰しようとすると希少性がなくなり、名誉としての価値が薄れます。一方、表彰される人が全体の1割以下だと、大多数の人が他人事になってしまう。およそ3分の1という設計が、絶妙なバランスなんです」

さらに代表が指摘するのが、「間接参加の心理」という現象です。「自分が直接表彰されなくても、同じ部署の仲間や同じサークルの友人が表彰されると、自分も参加した感覚を持てます。結婚式で、自分が主役でなくても、同じクラブの友人が新郎新婦と盛り上がっているのを見ると自然と嬉しくなりますよね。それと同じ原理です」

この「間接参加の心理」を活用するためには、表彰の単位をどう設計するかも重要です。個人の成果だけでなく、チームや部署単位の表彰を組み合わせることで、より多くの社員が当事者感を持てる設計が可能になります。「社員総会の表彰式を設計するとき、私はいつもこの3分の1を意識します。誰が表彰されて、誰が応援する側に回るか。その全体像を描くことが、設計者の仕事だと思っています」

 

経験経済論が裏付ける「演出の統合」

名誉の報酬は、表彰の瞬間だけで完結しません。代表は、表彰を含む社内イベント全体の「演出の統合」が経験価値を高めると説明します。この考え方の背景にも、経験経済論の知見があります。

「経験経済が示すのは、演出が統合されているほど体験の価値が高まるということです。映像のテイスト、資料のデザイン、会場の装飾、プログラムの運営——これらがバラバラでは、記憶に残る体験にはなりません。一つのテーマ・コンセプトでまとめられた空間と時間の中でこそ、人は深く感動します」

だからこそ代表は、社内イベントの準備においてテーマ・コンセプトを最初に決めることを最優先事項として推奨しています。「全体の演出が統合されていると、表彰の瞬間の輝きも増します。その日の空気感ごと記憶に刻まれるので、翌日も翌週も、その体験を思い出すことができます。現金は通帳の数字で完結しますが、演出された表彰の記憶は、ずっと社員の中に残ります」

また、イベントで制作された映像コンテンツは、長期にわたる資産になるとも言います。「10年前の新入社員が部長になったときに、当時のスピーチや表彰シーンを演出に使えます。過去の記録がアーカイブとして蓄積されることで、ストーリーの幅が時間とともに広がっていくんです。組織の歴史が、新たな名誉の文脈を生み出していきます」

 

まとめ

代表の言葉を通じて見えてきたのは、名誉の報酬とは単なるコスト削減策ではなく、組織のモメンタムを持続的に高めるための本質的な設計思想だということです。現金は慣れによってその効力を失いますが、よく設計された名誉の報酬は、評判情報の流通を通じて組織全体に広がり、長く機能し続けます。

代表が提案する「表彰のギネス化」と「3分の1ルール」は、大きな予算がなくても実践できる具体的な手法です。そして経験経済の知見が示すように、演出が統合されたイベントの中で行われる表彰は、社員の記憶に深く刻まれます。

「お金の問題点は慣れることです。でも名誉の問題点は、社内文化がしっかり醸成されていれば、ほとんどありません」——この一言に、20年の現場が蓄積した確信が凝縮されていると感じました。

取材・文:オージャスト編集部

 

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オージャストは、今回ご紹介した「名誉の報酬」設計をはじめ、表彰式・社員総会・キックオフイベントの企画・制作・運営を一貫して支援しています。経験経済論や組織心理学の知見を踏まえた演出設計で、参加者の記憶に長く残るイベントづくりをサポートします。表彰の仕組みをゼロから見直したい企業や、社内のモチベーション向上につながるイベントを検討されている人事・総務・経営企画のご担当者は、ぜひオージャストにご相談ください。