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150人の元顧客を訪ね歩いて見えた「そこまでやるか」基準——オージャスト代表が語る感動の作り方

2026-08-26

150人の元顧客を訪ね歩いて見えた「そこまでやるか」基準——オージャスト代表が語る感動の作り方

2026-08-26

社内イベントにおける「感動」とは、いったい何から生まれるのでしょうか。豪華な照明、著名なゲスト、大きな会場——そういった要素を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、株式会社オージャスト代表の金功勇は、20年にわたる現場経験から、まったく異なる答えを導き出しています。感動の源泉は「お金をかけること」ではなく「手間をかけること」にある、というのが代表の一貫した持論です。今回は、その考えの核心に迫る一つのエピソードを軸に、お話をうかがいました。

 

「派手さ」よりも「手間」が、人の心を動かします

社内イベントの現場に長く携わってきた代表は、演出の方向性について、多くの企業が陥りがちな誤解があると言います。

「豪華な演出にお金をかけると、参加者である社員の方から『そのお金を給料に反映してほしい』という感情が生まれてしまうことがあります。逆効果になり得るのです。一方で、手間がかかっていることが伝わる演出は、そういった反発を生みません。『こんなことまで考えてくれたんだ』『こんなことまで調べてくれたんだ』『こんなことまで用意してくれたんだ』——この三つの驚きこそが、本当の意味での感動につながります」

代表がこの確信にたどり着いたのは、数え切れないほどの現場を積み重ねてきた結果です。演出の巧みさや規模の大きさよりも、「そこまでやるか」と参加者が息を呑むレベルの手間こそが、組織の記憶に刻まれる瞬間を生む——代表はこれを、自身の仕事における絶対的な基準として置いています。

 

全国150人の元顧客を、一人ひとり訪ねました

その「そこまでやるか」基準を象徴するエピソードとして、代表が繰り返し語るのが、ある会社の表彰式にまつわる話です。オージャストが年に一度の社員総会の制作を任されたときのことでした。

「その会で表彰されることになったのは、社内では誰もが知るトップ営業の方でした。年間で最も多くの契約を獲得された方で、社内での存在感も大きかった。普通に表彰すれば、それで式として成立はします。『年間トップセールス、おめでとうございます』という紹介があって、拍手があって、トロフィーを渡して、本人スピーチをして。それで終わりです。でも私たちはそこで立ち止まって考えました。それで本当に感動が生まれるでしょうか。受賞者本人にも、会場で見ている社員の方々にも、何か人生に残るものを届けられるでしょうか、と」

その問いに対して代表たちが出した答えは、受賞者がこれまでの営業人生で担当してきた、すべての顧客に会いに行く、というものでした。過去のデータを掘り起こし、新人時代に最初に受注した顧客から直近の取引先まで、約150社をリストアップしたと言います。

「北は北海道から南は九州まで、全国を回って一社ずつ訪問しました。お願いしたことはシンプルです。『◯◯さんが年間トップで表彰されることになりました。当日の表彰式で流す動画に、応援メッセージを一言いただけませんか』とだけ伝えて。それだけです」

 

断る人は、ほぼいませんでした

150社を訪ね歩くという行為は、企画としても体力的にも、相当な負担を伴います。それでも代表たちがその選択をした背景には、「手間をかけた事実が伝わってこそ意味がある」という信念がありました。そして訪問の現場で、代表はあらためてその確信を深めることになったと言います。

「驚いたのは、断る方がほぼいなかったことです。『あの人にはお世話になったから』『最初に契約してくれた営業だったから、嬉しいよ』『彼の真面目さは本物だった』——一人ひとりが、その受賞者との思い出を語ってくれました。それぞれの言葉の中に、10年以上にわたる関係性が滲んでいました」

表彰式の当日、会場に流れた映像には、全国150人分の声と顔が収められていました。代表によれば、その瞬間の会場の反応は、これまでの仕事の中でも忘れがたいものだったと言います。

「受賞者の方が、ということはもちろんです。でもそれ以上に、会場で見ていた社員の方々の表情が変わっていきました。『ここまで連絡して、ここまで探してきてくれたのか』という驚きが、深い感動を生んでいました。『そこまでやるか』という基準が、確かに機能した瞬間でした」

 

「ハレの舞台」が、組織のモメンタムを動かします

こうしたエピソードの背景には、代表が社内イベントの本質として位置づける「モメンタム」という概念があります。組織の勢い——すなわちモメンタムを強化することこそが、社内イベントの根本的な役割だという考え方です。

「社内イベントは、組織のモメンタムを強化する装置です。ただし、これには前提があります。現在の組織が上昇局面にあるのか、下降局面にあるのかを、まず見極める必要があります。上昇局面であれば、小さな成功体験を全員で共有することで、『自分たちは行けているかもしれない』という感覚をさらに強化できます。一方で、業績が下がっているときに社内イベントをやると、下がっている流れをさらに強化してしまうリスクがあります。そういうときは、まず成果を上げることに集中するべきです」

この診断なしに社内イベントを実施することへの警鐘は、代表の話の中で繰り返し登場するテーマでもあります。感動の演出を語る前に、まずそもそもイベントをやるべき状況かどうかを見極めることが先決、というわけです。

その上で、上昇局面にある組織がイベントを実施するとき、代表が大切にしているのが「ハレ」という概念です。

「日本の伝統的な考え方に『ハレとケ』があります。ケ、つまり日常の中で社員の方々は一生懸命頑張って、苦労しています。現代のビジネス社会では、社員はずっとケの状態で疲弊しています。だからこそ企業は、ハレの舞台を意識的に用意する必要があります。オリンピックや甲子園、ワールドカップというハレの舞台があるからこそ、選手はあれだけ頑張れて、ドラマと感動が生まれます。企業も同じです。社員にとってのハレの舞台を設計することで、頑張る熱量とドラマが生まれます」

 

感動の演出には「美しさ」と「学び」の統合が必要です

150人分のメッセージを集めるという手間の話は、「そこまでやるか」という驚きを生むための実践例です。ただし代表は、手間をかけること単体で感動が完成するとは考えていません。演出の質——美しさと、そこに込められる学びの要素も、同じく欠かせないと言います。

「ディズニーランドのエレクトリカル・パレードが感動的なのは、音楽と照明、映像が絶妙にマッチして、ハーモニーとして統合されているからです。社内イベントでも、音楽・演出・照明・映像・タイミングが細部まで統合されていることが『美しさ』を生みます。でも美しさだけでは不十分です。そこに『学べる要素』が組み込まれている必要があります」

具体的には、感動的なドラマの中に、なぜその受賞者が成果を上げられたのか、どういうポイントを大事にしていたのか、という視点を必ず組み込むと言います。表彰式を「ヒーローを祝う場」にとどめず、組織全体の学びの場として機能させる設計が、モメンタムを持続させるために重要だという考えです。

「感動して終わり、ではいけないのです。感動した後に、見ていた社員の方が『自分もそういう営業をしよう』『あの先輩のあの姿勢が大事なんだ』と持ち帰れるものがある。それが経験としての価値です。経験は、モノやサービスと違って、そのまま人の記憶と行動に残ります。そこに社内イベントの、他では代替しにくい価値があると思っています」

 

まとめ

株式会社オージャスト代表の金功勇が20年の現場から導き出した結論は、シンプルながら深いものです。社内イベントの感動は、派手さや予算の大きさではなく、「そこまでやるか」と参加者が驚くほどの手間から生まれます。全国150人の元顧客を訪ね歩いたエピソードは、その基準を体現した一例に過ぎません。

・感動の源泉は「お金をかけること」ではなく「手間をかけること」にあります。

・「こんなことまで考えてくれたんだ」という驚きが、組織の記憶に残る瞬間を生みます。

・社内イベントを実施する前に、組織のモメンタムが上昇局面かどうかを診断することが前提になります。

・ハレの舞台を設計することで、社員が頑張る熱量とドラマが生まれます。

・演出の美しさと、学べる要素の統合が、感動を持続的な行動変容につなげます。

「社内イベントは、お金をかけるイベントではありません。手間をかけるイベントです」——代表のこの言葉は、20年間の現場での積み重ねから生まれた、揺るぎない信念です。その手間こそが、組織のモメンタムを生み、社員の人生に残る瞬間を作り、会社の文化を育てていく、と代表は確信しています。

取材・文:オージャスト編集部

 

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